高耐食めっき鋼板とは?
その種類や特長、耐食性のメカニズムを解説
持続性と環境負荷低減、さらに経済性が求められる現代社会では、あらゆる分野で材料の耐久性が重要視されています。その中で、建築や自動車、電子機器など様々な産業において製品の高耐久化、高寿命化として貢献しているのが、高耐食めっき鋼板です。
ここでは、高耐食めっき鋼板の特長とメリット、耐食性のメカニズムについて詳しく見ていきます。
高耐食めっき鋼板とは?
高耐食めっき鋼板の定義
高耐食めっき鋼板は、特に耐食性が求められる用途向けに開発された鋼板です。
従来の溶融亜鉛めっき鋼板や、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板に比べて、より高い耐食性を持つめっき鋼板を指します。特に、近年では「三元系高耐食めっき鋼板」が注目され、普及が進んでいます。
これらの鋼板は腐食を抑制する合金めっき層で覆われており、一般的な鋼板よりも耐用年数が長いことが特長となります。
高耐食めっき鋼板のめっき成分
高耐食めっき鋼板のめっき主成分は、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)です。
ベースとなる亜鉛にアルミニウムとマグネシウムを添加することで、耐食性を高めています。市場にはアルミニウムを約6%~19%、マグネシウムを約3%~6%含む高耐食めっき鋼板も供給されています。
アルミニウムとマグネシウムの比率が与える影響は、めっき層の化学的および物理的性質だけではありません。耐食性の維持のほか、めっき鋼板の加工性や加工時のめっき強度などにも影響を与えます。
JISにおける位置付け
日本産業規格(JIS)では、高耐食めっき鋼板に関する様々な基準が設定されています。
JIS G 3323は「溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板および鋼帯」として、鋼板の化学成分に加え、めっきの均一性や付着量、密着性など品質に影響を与える要因についても規定しています。この規格によって定義された品質基準を満たすことで、一定の耐食性能が保証されるのです。
JIS G 3323は定期的に見直しが行われ、常に最新の要件を満たすよう更新されています。様々な用途に供される高品質な鋼板製造の基準として広く認知されており、国内外で品質が保証されていることを示す重要な規定です。
高耐食めっき鋼板の適用分野
高耐食めっき鋼板が応用できる分野は多種多様です。海岸地域や化学物質にさらされるような環境下でも高い耐食性を発揮するため、建築材料や建築物の外装材のほか、化学プラントや沿岸施設での構造材料としても採用されています。
配電盤や制御盤の筐体や取付板、太陽光発電の架台、ビニールハウスの構造材など、広範囲で活用できる鋼板です。
また、耐食性だけではなく、美観を損なわずに長期間使用できるため、デザイン性を重視する構造物の材料としても選ばれています。
高耐食めっき鋼板の種類と特長
従来の「高耐食めっき鋼板」
溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板は、従来の高耐食めっき鋼板の代表例です。「ガルバリウム鋼板」という名前でも普及しています。
めっきの主成分は、アルミニウム55%、亜鉛なります。JIS G 3321で規定されており、屋根材や外壁材などの建築材料に広く用いられています。
表面の「スパングル」と呼ばれる独特の結晶模様は製品の代表的な特長ですが、めっき層が過度に曲げられたり、強い衝撃を受けたりした場合、結晶粒界より亀裂が入ることがあるため、注意が必要です。
ガルバリウム鋼板は、アルミニウムの不働態皮膜作用と亜鉛の犠牲防食作用が最もバランスよく発揮するめっき層を持つことにより、高い耐久性を持ちます。
このような特性により、長期にわたる耐久性と優れた経済性を提供し、建築業界において信頼を得てきました。新たな技術や材料が開発されている現在でも、建材分野を中心に広い分野で採用されています。
注)本コラムにおける「ガルバリウム鋼板」は、当社の製品を含む特定製品の出所表示ではなく「アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板」について広く用いられている名称として使用しています。
高耐食の概念を書き換える新たな「三元系高耐食めっき鋼板」
三元系高耐食めっき鋼板は、めっき主成分を、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムとした高耐食めっき鋼板です。
亜鉛にアルミニウムとマグネシウムを加えることで、めっき表層にマグネシウムを含む亜鉛、亜鉛-アルミニウム系の保護被膜が形成され、耐食性が向上します。
この高耐食めっき鋼板は塩害に強く、海岸地域などの厳しい環境下でも長期間優れた耐食性を維持します。
三元系高耐食めっき鋼板は、前述のようなスパングルがありません。均一で美しい外観は、見た目も求められる現代において大きな利点です。均一な表面はめっき割れや剥離のリスクを低減し、製品の品質保持力を高めます。
また、プレス加工時の性能も優れており、曲げ加工や絞り加工などのプレス加工を行っても、めっき層が割れにくいという特長を有しています。これは、めっき層が優れた延性を持ちながら、摺動性にも優れ、加工時のストレスに強いためです。
さらに切断面においても、めっき層から溶出しためっき成分が端面部を覆うことにより、腐食の進行を抑制します。これらの特性は、あらゆる分野で要求される耐久性と信頼性を強化し、特に建築材料や電設部材などにおいて需要が高いです。
神戸製鋼所が提供する、高耐食めっき鋼板「KOBEMAG®」
神戸製鋼所が提供している「KOBEMAG®」は、建築からインフラまで幅広い分野で求められる、耐久性と環境適応性を兼ね備えた高耐食めっき鋼板です。6%のアルミニウムと3%のマグネシウムを含む三元系のめっき技術により、塩害や厳しい気象条件下でも優れた耐食性を発揮します。切断端面においても、繊密なマグネシウムを含む亜鉛の保護皮膜が端面部を覆って鋼の素地の腐食を食い止め、長期的な耐食性の実現が可能です。
耐食性は構造物や建築物の長期的な保護と維持に不可欠であり、メンテナンスコストを削減できることから経済性の向上にも有益です。
また、KOBEMAG®はプレめっきされているため、後めっき加工の必要がありません。製造過程で外注先への輸送や配送などの工程が短縮され、製品のライフサイクル全体におけるCO2排出量の減少に貢献します。
サステナビリティを重視する現代社会では、環境負荷の低減は企業のCSR活動の推進にもつながる取り組みです。環境保全と経済性を兼ね備えたKOBEMAG®の採用をお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。